中小企業で不足しているのは「ITに詳しい人」だけではない
DX推進人材と聞くと、プログラミングやシステムに詳しい人を想像するかもしれません。しかし中小企業のDXで必要なのは、単にツールを操作できる人ではなく、会社の課題と現場の業務を理解し、改善を実行できる人です。たとえば、次のような役割があります。
- 経営者が実現したい状態を整理する
- 現場の業務と困りごとを聞き取る
- 改善する業務の優先順位を決める
- 必要なツールや方法を比較する
- 経営者と現場の認識を調整する
- 試験導入を進め、利用状況を確認する
- 問題が起きたときに運用を見直す
- 改善の目的と進捗を社内へ伝える
高度な開発技術が必要な部分は外部へ依頼できます。一方、自社の業務・顧客・社員の事情を理解し判断する役割は社内にも必要です。DX推進を一人の万能な専門家へ任せるのではなく、必要な役割を分解して体制をつくることが重要です。
中小企業でDX推進人材が不足する理由
人材不足の背景には、余力・能力範囲・権限・目的・現場協力に関わる5つの要因があります。
専任者を置く余裕がない
一人が複数業務を兼務しているため、DX担当に任命されても既存業務が減らなければ顧客対応や日常業務が優先されます。改善活動は空いた時間の仕事となり、進まなくなります。
必要な能力の範囲が広い
経営・業務・IT・プロジェクト管理・社内コミュニケーションなどが関係します。すべてを経験した人材の採用は簡単でなく、採用できても自社特有の業務を理解するまでに時間がかかります。
担当者に権限がない
業務変更には入力項目・役割分担・承認方法・ツールの見直しが伴います。担当者が提案しても経営者や部門責任者が判断しなければ進みません。責任だけを任せ、権限や意思決定の場を与えていないケースがあります。
目的が曖昧なまま任命している
「DXを進めてほしい」とだけ伝えても、何から始めるべきか判断できません。目についた施策へ個別に取り組み、会社全体の課題解決につながらない場合があります。
現場の協力を得にくい
新しい仕組みは慣れた手順を変えるため、「今のままで困っていない」と反対されることもあります。担当者個人が説得を担うと孤立しがちで、経営者が目的を示し部門責任者が協力する体制が必要です。
DX推進に必要な役割
一人の担当者を探す前に、必要な役割を整理しましょう。一人で兼ねる役割もあれば、外部で補える役割もあります。
意思決定者
DXの目的・優先順位・予算・業務変更を決定します。多くの中小企業では経営者や経営幹部が担い、現場へ丸投げせずなぜ取り組むかを説明し速やかに判断します。
推進責任者
課題・作業・担当者・期限を整理し、改善プロジェクトを前へ進めます。すべてを自分で行うのではなく、経営者・現場・外部支援者をつなぐ役割です。
業務担当者
対象業務の実態・例外処理・顧客や取引先との関係を説明します。現場の協力なしに実務で使える仕組みは作れません。ただしプロジェクト全体の責任まで負わせる必要はありません。
技術支援者
ツール選定・設定・データ整理・自動化・アプリ構築などを担当します。必要な技術は施策ごとに異なるため、すべてを社内に保有せず外部の専門家を活用できます。
利用者
新しい仕組みを実際に使う社員です。完成後に説明するだけでなく、試作や試験運用の段階から意見を聞くことが重要です。
社内のDX担当者を選ぶポイント
DX担当者は、必ずしも社内で最もITに詳しい人である必要はありません。次の観点で選びます。
現場業務を理解している
業務や情報の流れを理解している人は、問題の原因や改善の影響を考えやすくなります。すべての部署に詳しくなくても、分からないことを現場へ確認できる姿勢が重要です。
関係者の話を聞ける
経営者と現場では見えている課題が異なる場合があります。自分の考えだけで進めず、双方の話を整理できる人が適しています。
小さく試して修正できる
最初から完璧な仕組みを作ろうとせず、試した結果を受けて改善できる人が向いています。
役職よりも役割を明確にできる
若手社員を「DX担当」に任命するだけでは不十分です。何を判断できるのか・誰へ相談できるのか・どの業務を減らすのかを決める必要があります。
改善へ使う時間を確保できる
適任者でも時間がなければ進みません。既存業務を見直し、定例的に改善活動へ取り組める時間を確保します。
DX担当者を一人にしない体制の作り方
中小企業では、大人数のDX部門を新設する必要はありません。少人数でも、役割を分けたチームをつくれます。たとえば次のような体制です。
- 経営者:目的・予算・優先順位を決定する
- 社内担当者:進捗管理と社内調整を行う
- 現場担当者:業務内容を説明し、試験運用へ参加する
- 外部支援者:課題整理・方法の提案・仕組みの構築を支援する
定例会では、進捗・困りごと・必要な判断・次の作業を確認します。重要なのは責任の所在を明確にすることです。外部支援者が参加しても、会社の方針や業務変更の最終判断は自社で行います。
一人に集中させず、役割を分けたチームで進める。最終判断は自社が持つ
外部支援へ任せられること
社内の人手と知識を補う形で、外部支援には次のような役割を任せられます。
業務の棚卸しと課題整理
経営者と現場へヒアリングし、業務フロー・利用ファイル・二重入力・属人化・待ち時間などを整理します。当たり前になっている手順も外部の視点で見直せます。
ツールや改善方法の比較
Excelの整理・GAS・kintone・Webアプリ・生成AI・既存システムの活用などを比較します。製品ありきでなく課題・利用者・費用・保守に合う手段を選びます。
試作・設定・開発
業務アプリ・管理画面・帳票・自動集計・通知などを構築します。小さな範囲で試作し現場の意見を受けて修正することで、要件の認識違いを減らせます。
プロジェクトの進行
課題・担当者・期限・次の作業を整理し、定例的に進捗を確認します。社内だけでは後回しになりがちな改善活動も、外部との打ち合わせがあることで進めやすくなります。
導入と定着の支援
社員への説明・操作方法・運用ルール・問い合わせ対応・利用状況の確認を行い、使われていない機能や入力しにくい項目を見直して日常業務へ定着させます。
外部へ任せきりにしてはいけないこと
外部支援は有効ですが、すべてを丸投げすると自社に合わない仕組みや外部依存につながります。次は社内で担うべき領域です。
経営上の目的と優先順位
何を実現したいか・どの課題を優先するかは、経営者が判断します。
現場業務の説明
外部支援者は暗黙のルールや顧客ごとの事情を最初から知りません。業務担当者が実態を説明する必要があります。
業務ルールの最終決定
承認方法・入力責任・例外時の対応などは、社内の責任者が決定します。
導入目的の社内共有
外部だけが説明しても「会社がなぜ変えるのか」は伝わりにくいものです。経営者自身の言葉で目的を共有します。
外部支援の主な選択肢
外部支援は、支援範囲と実行への関わり方で種類が分かれます。自社で推進できる範囲に合わせて選びます。
システム開発・導入会社
必要な仕組みと要件が明確な場合に適します。何を作るべきか決まっていない場合は、開発前に業務整理を行える会社か確認します。
スポット支援
業務診断・ツール選定・特定の自動化など、一部の課題だけを依頼します。社内で推進できる範囲が大きい場合や、小さく試したい場合に利用しやすい方法です。
外部支援会社を選ぶポイント
支援先は、体制理解・現場確認・実行対応・中立性・社内との協働・実績の説明で見極めます。
中小企業の体制を理解しているか
専任者や十分な予算を前提にせず、現在の人員と業務の中で実行できる提案をしてくれるかを確認します。
現場を確認してくれるか
経営者の要望だけでなく、実際の業務・帳票・Excel・例外対応まで確認する支援先が望ましいです。
提案後の実行まで対応できるか
誰が設定・開発・データ整理・社内説明を行うか確認します。社内に実行人材がいない場合は、実作業まで支援範囲に含まれることが重要です。
複数の手段を比較できるか
特定ツールの販売だけでなく、既存環境の活用や小さな改善を比較してくれるかを見ます。
社内担当者と一緒に進めてくれるか
外部だけで作るのでなく、社内担当者へ判断根拠や運用方法を共有する支援先を選びます。
実績の説明が明確か
支援会社としての顧客実績・代表者の前職での経験・想定上の活用例を区別して説明しているかを確認します。
販売代理店における推進体制のイメージ
販売代理店では、営業・事務・仕入・経理など複数の担当者が一つの案件に関わります。たとえば見積業務を改善する場合、次の役割分担が考えられます。
- 経営者:見積の迅速化や粗利管理などの目的を決める
- 社内担当者:対象業務・会議日程・確認事項を整理する
- 営業担当者:商品選定・価格確認・顧客別対応を説明する
- 事務担当者:帳票作成・受発注・納品・請求とのつながりを説明する
- 外部支援者:業務フローを整理し、仕組みを試作・改善する
最初は一部の担当者や商品で試し、使いやすさと前後の業務への影響を確認します。ただしこれは活用イメージであり、特定の顧客企業への導入事例や成果ではありません。実際の体制や役割は、会社の規模・取扱商品・既存システムによって異なります。
営業・事務・外部支援者が役割を分担し、一部の業務から試して影響を確認する
人材不足の中でDXを進める手順
人材が足りなくても、課題を一つに絞り、役割を分けて小さく試すことから始められます。
解決したい経営課題を一つ決める
「DXを進める」ではなく、「見積作成を早くする」「案件の状況を共有する」など具体的な課題を選びます。
必要な役割を整理する
意思決定・進行・業務説明・技術対応を誰が担うかを決めます。
社内担当者の時間を確保する
担当者の既存業務を見直し、改善活動へ使う時間と打ち合わせの予定を確保します。
不足する役割だけ外部へ依頼する
課題整理・技術・進行など、社内で対応しにくい部分を明確にして相談します。
小さく試す
一部の業務・担当者・期間で新しい仕組みを試します。
利用状況を確認して修正する
現場の意見・入力状況・作業時間・問題点を確認し、仕組みと運用を見直します。
社内へ知識を残す
設定内容・運用ルール・判断基準を共有し、担当者が変わっても続けられる状態を目指します。
不足する役割だけ外部で補い、小さく試して社内に知識を残しながら進める
AI経営革新株式会社が支援できること
私たちは、DXを進める人材や時間が不足している中小企業に対し、課題整理から実行、現場への定着まで伴走しています。代表は前職の従業員約20名の販売代理店で取締役として会社改革を推進し、営業担当者へのヒアリングや現場同行を行い、経営と現場の間に入りながら、見積・帳票・案件・売上管理などの改善を進めてきました。
支援では、社内担当者へ「DXを進めてください」と任せきりにするのではなく、対象業務の整理・優先順位付け・仕組みの構築・試験運用・社内調整を一緒に進めます。Excel・Googleスプレッドシート・GAS・kintone・Webアプリ・生成AIなどを課題に合わせて選び、最初から大規模なシステム導入を前提にしません。経営者の「変えたい」という思いを、現場で実行できる計画と仕組みへ変えることを重視しています。
代表は前職の社内で業務改善アプリを3年間で400以上自作しましたが、これはAI経営革新株式会社として400社へ導入した実績ではありません。具体的な支援範囲は、無料相談で現在の業務を確認して判断します。会計・税務そのものの判断は税理士などの専門家へご相談ください。広島県を中心とした中国地方では訪問を交えた支援が可能で、その他の地域もオンラインで全国対応しています(当社はサイボウズ社の公式パートナーではありません)。
よくある質問
はい。技術的な知識がなくても相談できます。ただし、経営上の判断をする方と、対象業務を説明できる社員には参加していただく必要があります。
必ずしも必要ではありません。社内で判断・調整する担当者を決め、技術や進行など不足する役割を外部支援で補う方法があります。
年齢だけで適性は決まりません。業務への理解・関係者との調整力・改善へ使える時間・経営者の支援があるかを確認しましょう。
小規模な企業では経営者が推進責任者を兼ねることもあります。ただし作業まで抱え込むと経営に集中できないため、技術対応や進行を外部へ任せる方法も検討できます。
はい。見積・案件管理・Excel集計など、負担が大きく成果を確認しやすい業務から始められます。
まとめ|役割を分け、社内と外部で補い合う
- DXに必要なのはITに詳しい人だけでなく、課題と現場を理解し改善を実行できる人。役割を分解して体制をつくる
- 人材が不足する理由は、専任の余裕がない・能力範囲が広い・権限がない・目的が曖昧・現場協力を得にくい
- 必要な役割は、意思決定者・推進責任者・業務担当者・技術支援者・利用者
- 社内担当者は最もITに詳しい人でなく、現場理解・傾聴・小さく試せる・役割と時間を確保できる人を選ぶ
- 外部へ任せられるのは、棚卸し・優先順位・ツール比較・試作と開発・進行・定着支援
- 社内で担うのは、経営目的と優先順位・現場業務の説明・業務ルールの最終決定・導入目的の共有
- 外部支援はコンサル/伴走/開発/スポットから、自社で推進できる範囲に合わせて選ぶ
中小企業でDX推進人材が不足している場合、すべてを任せられる一人の専門家を探す必要はありません。意思決定・プロジェクトの進行・業務の説明・技術対応という役割を分け、社内と外部で補い合うことでDXを進められます。社内担当者には、自社の業務を理解し関係者の話を聞ける人を選び、同時に既存業務を調整して改善へ使う時間と必要な権限を確保することが大切です。外部支援を選ぶ際は、課題整理だけでなく、仕組みの構築・社内調整・試験運用・定着まで対応できるかを確認しましょう。私たちは、DXを進めたい経営者と社内担当者の隣に立ち、何から変えるべきかを整理し、実際に現場が変わるところまで伴走します。「DXを任せられる社員がいない」「実行する人がいない」という場合は、DX担当者がいない中小企業の進め方もあわせてご覧ください。まずは無料相談で、自社で担う役割と外部へ任せる役割から一緒に整理します。
※kintoneは、サイボウズ株式会社の登録商標です。